社長が語るIR Japanとは-商工クラブ-

「市場に学ぶ」謙虚な姿勢を貫き
株式公開企業に高度なソリューションを提供

商工クラブ 第624号 2009年6月号掲載

インタビュアー:社団法人 日本商工倶楽部理事長 大塚壽郎
対談日:2009年2月18日

あふれる情報の中からいかにコア情報を獲得するかがポイント

大塚:10年前、鶴野前社長の時代にインタビューをさせて頂きましたので、御社は今回が3回目のご登場になるわけですが、当時は年商12億円、従業員60名だったと伺っています。

寺下:10年前といえば、ちょうど私が入社した頃で、会社の存亡を賭け、IRビジネスで業務を続けていけるかどうかの崖っ縁の状況にありました。鶴野前社長の変わらぬ熱意のもと、最後の闘いと考え入社したことがつい昨日のようです。幸いにも、私が立ち上げたコンサルティング部門が企業防衛という大きな時流に乗り、どうにか立ち直れたような次第です。

大塚:今では名実ともに業界のNo.1になられたわけですが、成功の秘訣はどのへんにあるとお考えですか。

寺下:結局は企業防衛に関するインテリジェンスなんですよ。インテリジェンスとは何かと言えば、買収・統合などのM&Aに関するもので、資本市場の中の最も重要な情報なんです。要するに、企業買収の最終決定権は国内及び海外の株主に委ねられており、複雑な株主情報や曖昧な市場情報が氾濫する中で、いかに確実な情報を獲得できるか、否かに企業の存続がかかっているということです。インテリジェンスの重要性を発見したことが、当社発展の重要な転換点であったということです。

大塚:インテリジェンスとおっしゃいましたが、日本語で言うと、どうなりますか。

寺下:知性ですね。あるいはマーケットのコア情報を吸収する力と言ったほうがいいかもしれません。

大塚:それが御社の強味だと…。

寺下:いろいろな金融・証券系列のIR会社があるけれども、アイ・アール ジャパンは、いずれの金融系列にも属さない独立系であって、ニュートラルであるが故に、自ら自由に情報を得ることができるわけです。独立系を堅持してきたのは、公正な資本競争力の向上とグローバルな資本経済の発展に貢献する、という私どもの使命を達成するためにはそれが不可欠と考えてきたからなのです。そのために、誰にも負けないほどの人とお金を注ぎ込んでインフラ投資をしてきたのが、当社の歴史でもあります。
現在のような大変革時代に何よりも重要なのは、日々学び、反省を続けながら、誰よりもスピード感をもって具体的なアクションを実践し、改善していくことではないでしょうか。当社は、問題に対する具体的な改善が、持続的成長の糧として蓄えられていくと確信しながら経営を続けております。

大塚:いま、人とお金を注ぎ込んだとおっしゃいましたが、それだって簡単なことではないと思いますよ。

寺下:マーケット情報を得るにはIR会社の立場を深く意識し、二つの主体から育てていただかなければなりません。その一つは投資家です。しかしながら、ただ投資家を知っているだけでは不完全で、株式を発行している上場会社のことも知らなければならないのです。私どもは、投資家と株式発行企業という二つの主体に育てていただいた。言葉を変えると、双方から情報や意見を受け止めることで、まるでサンドバックのように殴られ続けることによって、初めて強靭な体力をつけることができたのです。
そうやって、十年間戦ってきた人間の感覚が社内に蓄積され、マーケットの先端知識を誰よりも早く身に付けることが出来るようになったと言えますね。要するに、下準備となるトレーニングをしてきたからこその結果だということです。そこが重要なのであって、発行企業と投資家の両方を知らない限り、マーケットを調べることは出来ないのです。

「礼を重んじる会社になる」ことこれが当社の合い言葉です

大塚:それが完全に可能なのは、日本では御社だけということですから、そのへんは凄いと思います。私が朝日工業の社長だった頃も、IR関係では大手の証券会社が関わっていましたが、そういう大手でさえ、アイ・アール ジャパンさんに手伝って貰わなければ駄目だ…と。御社の成功の裏には、あちこちから叩かれ、鍛えられたことが、力として積み重なってきたということに尽きるわけですね。

寺下:私の出発点は、証券大手のIR会社や外資系のIR会社で出来ないことは何かということでした。日本のいけないところは、昔から何でも外のものを又聞きしたように借りてきて売ること、いわゆるインポーターですね。私の最初のお客様はソニーさんでしたが、海外の調査会社を使ったけれども全く機能しませんでした。そのときソニーさんから、「お前に任せたんだから、お前がしっかりしろ」と温かいご支援を頂いたわけです。そこで日本人としては初めて、自ら資本市場の情報を取りに海外に出掛け、全く外国人を使わず、全てを自分でやったことが大きな経験となりました。

大塚:しかし、社長お一人では出来ないですよね。人はどうやって育てられたのですか。

寺下:最初は2人、次は5人、そして10人というように、コツコツと採用していきました。それもスカウト会社を使うのではなく、「IRコンサルタント募集」と新聞広告を出したわけです。もちろん元ファンドマネージャーやアナリスト経験者もいましたが、全く違う分野の人間も人柄を買って採用いたしました。

大塚:いま人柄とおっしゃいましたが、広い意味では、それも教養ということになりますか。

寺下:その通りです。最終的には学識ではなく、やはり人望と教養ですね。そうした意味からも、わが社は「礼を重んじる会社になれ」ということを合い言葉にしていますし、「礼に始まり礼に終われ」と、常々言っております。

大塚:日本の文部省科学省に聞かせたいようなお話で、それこそコアを突いているということだと思います。ある製造会社の社長さんが、フランスに研修生を出したのですが、フランスに行くからといって、フランス語が出来るかどうかは関係ないと言っておられました。

寺下:色々な知識や技術を持った人間から、それらを全て取り除いたとき何が残るかですね。海外の先達でも、懐の広い人というのは、礼儀を重んじる人の質問には、きちんと答えてくれるものです。つまりは中身なんですよ。

大塚:確かに、英語が話せるかどうかの問題ではないですよね。教育問題でも、よく話題になることですが、英会話より先に源氏物語を読むべきだ…と。何しろ小中学校の教科書に、夏目漱石すら載っていないんですから。日本人としての教養を身に付けていると、たとえ言葉は通じなくても、相手はその気持ちを十分に感じ取ってくれるという話を先日聞いたばかりです。

寺下:全くその通りです。そういう意味でも、当社がここまで成長することが出来たのは、人選にあったと確信しています。

日本株の判明調査に徹する専門リサーチ部門を自ら構築

大塚:ところで、御社の事業をひとことで言えば、クライアント企業のIR・SRを総合的に支援するアドバイザーということですね。

寺下:世界的な産業再編の中にあって、いまや企業同士が一緒になったり離れたりしている一方、少子化により、当然ながらマーケットが縮小しつつあります。こういう状況ですので企業が上場した瞬間から買収のターゲットになります。また時には、自ら買収先を探すこともあります。 繰り返しますが、この買収を最終的に決定するのは役員ではなく、株主です。この株主に関する情報や市場に関するコアの情報をわかりやすく企業に説明し、企業側に立ったソリューションを提供することが当社の役割です。こうした意味で上場準備、事業継承、M&A、さらには大型の資金調達に関連した分野で、いつも発行企業の皆さん方の側にいる、使い勝手のいい弁護士的存在と言えるかも知れません。

大塚:お取引先はどのくらいありますか。

寺下:全てを含めると、現在は400社強というところでしょうか。

大塚:御社の株主判明調査というのは大変に画期的ですが、これから上場しようという会社も使えるんですね。

寺下:はい。つまり上場しようとする場合、未上場会社といえども競合会社がありますよね。もし、その競合会社が上場していた場合、その株をどこが持っているかが判明すれば、自分たちがどこに説明にいけばいいかといった話もできるわけです。つまり、株主名簿からは実質的な株主を把握できない信託勘定や、外国人名義を構成する、国内・海外運用機関の株式保有状況を調査するのが株主判明調査で、効率的なIR活動、効果的なSR活動はもちろん、平時における買収防衛策の導入や有事の対応では欠かすことの出来ないサービスです。私どもは、いずれの金融系列にも属していない独立した調査体制によって、発行企業のご依頼に基づき、徹底した情報管理の下でリサーチいたします。

大塚:御社の歴史を項目別に書いたものを拝見いたしますと、日本初というのが11個もあるのにも驚きました。

寺下:日本という国の間接金融であるバンクシステムには冠たるものがあるのですが、直接金融の資本市場となると日本は結構遅れているんですよ。

大塚:それにしても、凄いところに目を付けられましたね。今後の展開については、どうお考えですか。

寺下:ひとことで申し上げれば、弁護士や会計士等、最高のスタッフにより、とにかくお客様がハッピーになるような資本政策のお手伝いをすることです。

大塚:ご趣味は…。

寺下:ゴルフ一筋といったところでしょうか。

大塚:お忙しいところ有難うございました。御社のますますのご発展をお祈り申し上げます。