社長対談:寺下史郎 × 家森信善

寺下史郎×家森信善(社外取締役)

IRからSRの時代へ

家森信善 社外取締役(以下:家森):これからは「SRが重要」と寺下社長はおっしゃっておられますが、IRからSRの時代へと変革していく背景についてお聞かせください。

寺下史郎 社長(以下:寺下):まずは、IRとSRの違いについて説明させていただきます。IRとSRの最大の違いは株主かどうかということ。つまり、株主と投資家との違いはどこにあるかということです。株主は株式会社を構成する主要なステークホルダーであり、その中でも特に重要なのは、株主総会において、株式保有数に応じて議決権を行使できるということです。つまり、リレーションを行う対象が、株主総会で議決権行使できるか否かがIRとSRとの違いになります。 従前は日本の企業は銀行や取引先などとの持合いで安定株主を作ってきたので、SRは企業の中であまり意識されてきませんでした。しかし、現在は外国人投資家をはじめとした投資家が、エクイティとして日本の事業会社やマーケットの中で蓄えられてきて、SRがとても重要となってきています。

家森:これまでは沈黙している株主が多く、いわば顔の見えない投資家全般として扱えばよかったが、現在はそれぞれの意見を明確に持った株主が増えてきたということですね。そうすると、会社はどういう対応をとらねばなりませんか。

寺下:これまでは、ただ情報を開示すればよいとされていましたが、現在は各投資家を意識し、適切な情報開示を行っていかなくてはなりません。それにより、双方向の交流が生まれてきています。

家森:IRとSRの情報開示の仕方について具体的な違いはどこにありますか。

寺下:IRは業績に関するディスクロージャーで、SRはマネジメントに関するディスクロージャーです。IRの場合はマネジメントよりも収益に重点が置かれていますが、SRはマネジメントの質が重要となります。例えば、マネジメントの質が良くないにもかかわらず、株主総会において株主が「NO」と出さなかった場合は、株主の責任になります。これはスチュアードコードシップにつながってきます。

家森:株主が重視するマネジメントの質とは、企業の成長プロセスをどのようにマネジメントしているかの仕組みだと理解してもよいでしょうか。

寺下:どのようなマネジメント、組織が経営を行っているのかということが重要です。外国人投資家がマネジメントの質に目を向き始めてきているので、「経営のプロ」としての意識が重要です。

家森:今までに経験のない新しい環境ですから、多くの企業はどのようなSR活動が本当に意味のあるものなのか、戸惑われているのではないでしょうか。IR JapanはSR活動の支援に力を入れられていますが、IR JapanがSRを支援するときの最大の強みはどこにありますか。

寺下:独立系ということです。金融業界の中で利害関係に属していないという点はSRを行う上で、とても重要です。金融系グループはSRを単独で行うことができないため、当社のポジションはとても重要なところにあると考えています。また、当社は1997年から判明調査を行い、お客様と共に成長し、信頼度も高いです。

コーポレートガバナンス・コードの追い風

寺下史郎

家森:6月よりコーポレートガバナンス・コードが適用となりましたが、IR Japanのビジネスにどんな影響が出ていますか。

寺下:まず、コーポレートガバナンス・コードは、マネジメントの質をディスクローズ(開示)することを法的な角度で示した内容です。3月決算の企業は2015年12月までにコーポレートガバナンス報告書の73項目について答えなくてはなりません。これまでの有価証券報告書や決算短信とは異なります。日本では初めてということもあり、当社への問い合わせは多くきております。

家森:競合他社もいるかと思いますが、この面でのIR Japanの強みはどういうところにありますか。

寺下:当社は監査系等のコンサルタント会社とは異なり、1997年から開始した国内外の判明調査を行っているため機関株主のことを理解しており、直接コンタクトできるということが強みです。機関投資家がコーポレートガバナンス報告書をどのような観点で読むかアドバイスすることができます。

IR Japanのガバナンス体制

家森信善 社外取締役

家森:続いて、IR Japanのガバナンス体制についてお伺いします。IR Japan及び親会社であるIR Japanホールディングスも2015年6月24日より監査等委員会設置会社へ移行いたしましたが、移行前と比較し、どの点が良くなったと感じていらっしゃいますか。

寺下:これまで家森社外取締役も含め監査役ということで機能を果たしてこられましたが、取締役として議決権があることがとても明確だと感じております。それは決定に重みがあるという点です。体制自体は大きく変化したわけではないですが、議決権という重みを持ちながら実践していただいた方がよいと感じています。監査役会設置会社が良くないというわけではないですが、議決権を持つ取締役が、社長を解任できるというところがとても重要と考えます。 家森社外取締役自身はどのようにお考えですか。

家森:IR Japanの場合は、細かい情報も提供されており、監査役会が上手に機能していたと感じています。監査等委員会設置会社へ移行したことで、表面上の変化はありませんが、私もいざという時に社長を解任できるという点がとても大きいと感じています。外国人に対しても、社外取締役として投票権を持っていることはとてもわかりやすく、説明もしやすいです。 平常時の社外取締役の役割はアドバイザー的役割であり、社長とは異なる知識や経験を持った観点からマネジメントの質の向上のために助言することだと考えています。通常は、経営のプロである社長に実務を任せながら、「おかしい」という時には、強力にストップをかけることができる点が重要と考えています。

家森:最後に、寺下社長は今後IR Japanをどのような会社にしていきたいとお考えですか。

寺下:これまでは、メインバンクを主体とした間接金融のガバナンスが主でしたが、これからは直接金融を主体としたガバナンスへと変化しております。その中で当社はベストアドバイスする重要な存在だと考えております。 同様に、コンサルティング業務もこれまでは株主を主体とした株主総会や委任状争奪戦などに関するコンサルティングでしたが、これからはファイナンスに関するコンサルティングが増えていき、資本市場における最大の相談役としての位置づけになると考えています。